2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

夕立ちのひと

夏とは気分のことだとあなたは言いました。 氷でいっぱいのオレンジスカッシュを、ストローで、からからと、回しながら。汗をかいたグラスの水滴の数だけやってくるその訪れは、急、いつも。 甲州街道を走る蝉の声から逃げ込むように地下一階。そうしてエア…

恋人の部屋

ははとのLINEより はは「いまかれしんち?」 わたし「うん、そうだよ」 はは「かれし、寝た?」 わたし「茶の間でふだん寝ているらしいので八時に寝た」 おつきあいしている相手のことは恋人と呼びたいよね、とは、高校のときから流星の友人と妄想していた。…

宛先はなくても

「ゆめをみていた、つきはみていた」 驚いた。ほんとにびっくりした。 視線をあげた先の、半径一メートル以内にあのひとがいる。あのひとが、だいすきなあのひとがいる! 驚きすぎたあたしは登り途中の階段につまずき、腕、ひざから盛大にこけた。てをのばせ…

ICカードの使えない場所

海岸沿いの高速道路をふちどるように走るバスに乗った。降車場から目的地までは80分だった。 窓から海が見えた。右から左へと流れてゆく景色の中の、同じように右から左へと流れてゆく大きな建物たちに、水平線はぶつ切りにされていく。あの建物たちは、建っ…

おとなってやつ part2

おとなになるといえば、17歳ころの私は「おとな」になりたくて、ヒールを履くことがたびたびあった。今もだけれどそのときの私はいつも遅刻しかけていたせいで、また陸上部であったゆえの癖(そんなのあるのか)で、よく走っていた。いま思えば慣れないヒー…

おとなってやつ

「24さいでこんなことになってるなんて予想外だったよね、恋にあたふたして友情に毎日感謝してる大人になる予定じゃなかった、でも毎日最高」 私の流星の友人のことばである。ほんとうに最高な女の子だ。 先週彼女と電話をした。近況報告などをしつつ、この…

夏のコントラスト

先週友人に誘われて、奈良の花火大会に行ってきた。 そんなに大規模ではないらしく、ほぼ地元のひとばかりのような雰囲気であった。地元人ぶりながら、クレープの屋台に並んだ。いちごクレープを注文したので、そのつもりで食べたら、なぜかパインだった。甘…

少女時代のこと

先日私は、毎日電子文通をしている七年来の友人から「永遠の少女マニア」との称号を与えられた。 その永遠の少女マニアは先週、はじめて行った古書店で、宮迫千鶴さんの『超少女へ』という本をたまたまみつけて、げっとしてきた。これが素晴らしい出会いであ…

星拾い

なにも言えない。なにも書けない。みたいなところで立ち止まってしまう。これすら言いたくないし書きたくない。なにも言えない。なにも書けない。 「何も言えなくなるなんてバカなあやまち」をしてしまうのは、ありとあらゆる種類の言葉を知らないからなのだ…