「私」は「私」を生きていること

 

 泣きながら書いています。

 感情で書いています。

 考えないことには価値がないとは思っています。

 

 ここのところずっとしんどい。

 近い状態にあったとしても「しんどい」ということばを使うことはあまりなかったのだけれど、このことばがとてもしっくりくる。しんどい。しんどい。

 ここのところ、「セクハラ」にかかわる事件や議論を多く目にする(ずっと昔からある事件や議論だけれど)。あまりに見過ぎて、自分にもあったことを思いだしました。しんどい。

 

 6年前、すれ違いざまに知らない人から卑猥な言葉を浴びせられ、その後自転車で追いかけられました。すっごく怖かった。怖かった。私はあれから、その「知らない人」と同じ性別の知らない人とすれ違うことが、今でも、昼間でも、人通りのあるところでも、怖いです。目が合うのも怖いです。目が合えばすぐに逸らします、逸らしてすこししてもまだ私を見ているとき、ほんとうに怖くてたまらないです。

 あれは私が、人の歩いていない夜の0時半に足や腕を出した夏ワンピ姿で一人で歩いていたのが悪いんでしょうか?

 その後も別件で2回ほど、人通りのある日中にすれ違いざまに突然叫ばれたり私の容姿に関するコメントを吐き捨てられたことがありました。

 あれは私が、外を歩いていたのが悪いんでしょうか?

 それから昨年、駅のホームで立っていたらお尻を触られたことがありました。2回。

 1回めのときは偶然かな、ただ当たっただけかな、と思ったけれど、2回めのときはさすがに確信しました。混雑しているわけでもないのに手のひら全体がお尻に触るはずがない、偶然のはずがない。でも私は、どうすることもできませんでした。それをした人の後ろ姿を振りむいただけで凄まじい屈辱感に満ちて、もうどうすることもできませんでした。たとえば訴えようにも捕まえようにも、たぶん立証することはできないんだろうと思いました。そして今の私にはそれをするだけの気力がないと思いました。

 あれは私が、平日18時半の池袋駅湘南新宿ラインのホームに、紺色の長ずぼんを履いて紺色のコートを着て紺色のかばんを持って立っていたのが悪いんでしょうか?

 そのほかにも、友人と2人で歩いていたら窓からこちらをじっと見ている人の運転する乗用車が私たちの横を徐行し、その後もう一度私たちの横を通りすぎたこと(怖くなった友人と私はコンビニに駆け込み、友人の車で帰宅しました)や、乗用車が自転車を漕いでいる私の横を並走し、一時停車したあと再び追いかけてきた(私は自転車を全力で漕いで細い道に入り逃げました)ことなどがありました。

 あれは私が、友人と2人で笑いながら歩いていたのが悪いんでしょうか?

 あれは私が、自転車を漕いでいたのが悪いんでしょうか?

 

 あなたは、あなたたちは、その対象が「女」であればよくて、誰でもよくて、「私に」したということはもう覚えていないのでしょうけれど、私は、「私」という「個」で「私が」受けるしかないんだよ、忘れても、忘れないんだよ。

 

 私はセクハラという言葉が嫌いだ。

 「私」がされたのは、されているのは、されるのは、「セクハラ」ではなくて、「私」がこれまで生きてきたこと、大事にしてきたこと、大事にしている人、大事にしてくれた人、楽しかったこと、がんばったこと、好きなおやつ、楽しみに思っていること、そういうものを、「無」にすること、「私」から「私」を引きはがすこと、「私」を踏み躙ることだ。

 

 途中までどうにか性別にはふれずに書いてきたけれど、結局3段落上で性別にふれてしまった。

    ここでは、私が、「異性」から「性」を対象とした言葉を発せられ、行為をされたから性別にふれて書いたが、「性別」はあまり重要なことではないと考えている。その理由は既述した。

 

 セクハラなどいう言葉(しかも略語)でまとめたり性別による対立の構図で安易にくくったりしてこぼされる「私」という個。逃してはいけないのはそれだと思う。

 

 「セクハラくらいでおおげさな」「痴漢されたとか言って、可愛いアピール」「ていうかわかるでしょされる方が悪いでしょ」「何もできない世の中になっていくね」「容疑者にも人生が未来がある」「誰にも相手にされない奴の身にもなれよ」

 

 うるさい、「私」がそれらに泣かされていいはずがない

 

 

 でもみんな幸せに生きたいだけなんだよね、そうだよね

 私はそうだからじゃましないで

 お願いだから加害せずに幸せになってよ

 

    「私」は「私」を生きていて「あなた」は「あなた」の「私」を生きている、みんな「私」だということが大体のことを解決してくれるのだと思いたい。

 

 

 書きっぱなしで勝手かもしれないがここに書いた内容にかんしてどんな意見も感想も聞きたくはない