夕立ちのひと

夏とは気分のことだとあなたは言いました。 氷でいっぱいのオレンジスカッシュを、ストローで、からからと、回しながら。汗をかいたグラスの水滴の数だけやってくるその訪れは、急、いつも。 甲州街道を走る蝉の声から逃げ込むように地下一階。そうしてエア…

あざやかな透明

いつかかえるということ。 ここはきっと、水辺。私たちはいつも水辺にいる。波が寄せてきては、かえってゆくのを、ただ眺めている。ね、きらきらがきれいだね。陽の反射。プリズム。きれいだね。足を浸したら、つめたかったよ。 ひとは、ここから出発して、…

恋人の部屋

ははとのLINEより はは「いまかれしんち?」 わたし「うん、そうだよ」 はは「かれし、寝た?」 わたし「茶の間でふだん寝ているらしいので八時に寝た」 おつきあいしている相手のことは恋人と呼びたいよね、とは、高校のときから流星の友人と妄想していた。…

宛先はなくても

「ゆめをみていた、つきはみていた」 驚いた。ほんとにびっくりした。 視線をあげた先の、半径一メートル以内にあのひとがいる。あのひとが、だいすきなあのひとがいる! 驚きすぎたあたしは登り途中の階段につまずき、腕、ひざから盛大にこけた。てをのばせ…

ICカードの使えない場所

海岸沿いの高速道路をふちどるように走るバスに乗った。降車場から目的地までは80分だった。 窓から海が見えた。右から左へと流れてゆく景色の中の、同じように右から左へと流れてゆく大きな建物たちに、水平線はぶつ切りにされていく。あの建物たちは、建っ…

おとなってやつ part2

おとなになるといえば、十七歳ころの私は「おとな」になりたくて、ヒールを履くことがたびたびあった。今もだけれどそのときの私はいつも遅刻しかけていたせいで、また陸上部であったゆえの癖(そんなのあるのか)で、よく走っていた。いま思えば慣れないヒ…

おとなってやつ

「24さいでこんなことになってるなんて予想外だったよね、恋にあたふたして友情に毎日感謝してる大人になる予定じゃなかった、でも毎日最高」 私の流星の友人のことばである。ほんとうに最高な女の子だ。 先週彼女と電話をした。近況報告などをしつつ、この…

夏のコントラスト

先週友人に誘われて、奈良の花火大会に行ってきた。 そんなに大規模ではないらしく、ほぼ地元のひとばかりのような雰囲気であった。地元人ぶりながら、クレープの屋台に並ぶ。いちごクレープを注文したのでそのつもりで食べたら、なぜかパインだった。あま…

少女時代のこと

先日私は、毎日電子文通をしている七年来の友人から「永遠の少女マニア」との称号を与えられた。 その永遠の少女マニアは先週、はじめて行った古書店で、宮迫千鶴さんの『超少女へ』という本をたまたまみつけて、げっとしてきた。これが素晴らしい出会いで…

星拾い

なにも言えない。なにも書けない。みたいなところで立ち止まってしまう。これすら言いたくないし書きたくない。なにも言えない。なにも書けない。 「何も言えなくなるなんてバカなあやまち」をしてしまうのは、ありとあらゆる種類の言葉を知らないからなの…

保健室でねむる

「おなかいたい」とは、人間の発するあらゆる弱音のなかで一番かわいいものだと思う。 きのうの私は、とてもおなかが痛かった。 冒頭に書いたことをここでいきなり覆すけれども、きのうのその「おなかいたい」は、「かわいい」なんて生易しいものではなかっ…

恋のまたの名は

いつも花にばかり目が行ってしまうから、外を出歩くたび危機一髪が起こる。と、「花ある君」に先日書いた。私が見てしまうのは、花ばかりではなくて、空もだった。 家の玄関を出たら、まず空を見上げる癖が私にはある。 自転車をこいでいても見上げながら、…

この町で

京都生活5年目にしてはじめて祇園祭に行ってきた。この町での生活・大学生活をふりかえるには、半年残っているから、まだ早い。早いのでさらっと。 何度もここに書いているとおり人と出かけることのほぼない一回生後期以降だった。けれどもそれゆえか、ひと…

花ある君

梔子の花びらって、どんなかしら、と思っていた。 梔子って、意志がある。あの造形。ほかの花より立体的に感じるのは、そのなにか意志のせいか。「わたしはこういうものとして生きています」という主張、意志。それゆえか、あの花びらは澄んだような白では…

人生、それは「魔法的」な

大学生活最後の年に出会えた小沢健二さんの「魔法的」ライブ、そして これまでの人生で出会えたあなたへ、これから出会うあなたへ あなたに出会えたことで私の人生これまでが肯定された気がします。どうもありがとう。 そうあなたに伝えたら、あなたもきっと…

原点について

2016年7月2日(土) 髪切ったしな。夏の始まりだな。と、きのう、思っていたら、あっという間だった。 猛暑日。今季初蝉。今季初エアコン。アイスも食べたし。まあ、アイスは、今季初じゃないんだけども。 見渡すかぎり山に囲まれた京都の酷暑が始まる。 も…

兆す

季節が放つ光のなかで深呼吸するように過ぎた日々は、たしかにあのひとがいたことを記憶させてくれた。三月はにぶい春の光。風だけがつめたい春の夜。わたしたちは目的もなくただ歩いた。 ( where do we go? ) 「恋におちる」とは、からだごと全身の落下で…

夏の花

夏の花が咲きはじめている。 凌霄花、のうぜんかずら、空凌ぐ花。 百日紅、さるすべり、百日紅いろをつける花。 のうぜんかずらは、通学路にて、先週見つけた。堂々とした花のいろ、花のつけ方。わたしにはなくて、憧れる。そっかもうそんな時季なのか、なん…

from here

from hereわたしはさわやかな風がすきなので六月の湿気が得意ではない窓の外には可視化する憂うつわたしは晴れがすきなので雨がやはり得意ではないきょうはひねもすの降水虹が架かるまでおやすみなさい薄れゆく意識のなかであなたの水平線を越えるわたしをみ…

駆け出そうか

赤い唇が色あせる前に その熱い血潮の枯れぬ間に きみは駆け出すんだね 今日は春の中へ 瞳の中に花が咲いて サニーデイ・サービス「東京」 サニーデイ・サービスの「東京再訪」をみてきました。「絶対いいよね〜」という想像の一億倍上回って、よかった。100…

思い出し泣きする話

私は大学1回生の後期から精神的にやばくなりはじめました(小学生のころから不安定だと親戚には言われてるし中学の卒業式で担任の先生にお前はふらっと死にそうだ、死ぬなよと言われてはいました)。原因はいろいろあったのだろうし、いまだによくわからない…

なにを聞いてもしっくりこない夜というものがあってね

生きていたいなあ。 私には好きなひとしかいないから生きていたい。私は、愛する人間です。みんな愛しているんです。ひとも季節も時間も。だから私を殺すとしたら私なのでしょう。みんな私を生きさせてくれているのだから、私を殺すとしたら私しかいない。…

好意はアルコールに溶かし込め

ここへ来る汽車の窓に、曼珠沙華が一ぱい咲いていたわ。 あら曼珠沙華をごぞんじないの?あすこのあの花よ。 別れる男に、花の名を一つは教えておきなさい。 花は毎年必ず咲きます。 川端康成「化粧の天使達」 サツキがかわいいね、えっこれはつつじじゃない…

ゆくひとたち

ゆくひとたち夏の風が君をさらってオリオン座がわたしを手招きました駆けるように晴れたあの日ふたりでまいたあおい絵の具が空からことぱをなくさせましただから夜は星をならべて物語をはじめたのです星の瞬きが語りかける夜恋とは、愛とは、美しさとは隣の…

とりあえずで生きる

この1ヶ月くらい鬱々としていたのに急に生き返った。ここのところばいとと大学しか行かない日々(ゼミも怖くてさぼってた)、ばいとでしか人と会話しない日々、だった。でも出かけるようになったら世界が広がった。生きていこうとおもった。 “Le vent se lè…

宿る

そのときのわたしにとって彼のなまえをよびかけることは、告白に等しかった。好きだと伝える代わりになまえをよんだ。彼の名を一文字ずつ発音することは、ひとつのたのしさであった。 ドレミファソラシドの世界に身を置いて、鍵盤を弾けば音が鳴るように、そ…

さつきばれ

物語のはじまりには 丁度いい季節になったろう まるで全てが変わるように 小沢健二「暗闇から手を伸ばせ」 五月。五月はよい季節である。 時折さあっと吹く風は、四月のように花を散らせはしないし、六月からはじまる夏のように、じとりとした湿気を含むこと…